信号の 点滅は稲妻への 合図

１ＤＫ 八重桜まで 徒歩二分

給茶機の 上の軋めく 扇風機

サイフォンに 潰れる炎 花の雨

抜型を 重ねて 仕事納めかな

観覧車の 列に春ショールの 教師

許されて 寺の笹切る 星祭

藤椅子の 脚もとにある 水平線

ひまわりや 廃線沿いの ラーメン屋

黒き地の 正体は海 揚花火

光束ねるごと 日焼子ら 走る

「とき」発車 旅憂わしき 花追風

ヘビメタの 担ぐギターと 破魔矢かな

向日葵の 波に逆らひ 兄逝きぬ

山笑う 赤ちゃん象に 哺乳瓶

６の次 ７の菜の花 漕ぐペダル

吊り革の師走 遠心力に耐へ

町会長 犬を預かる 盆踊り

手袋を 外して撫でる 猫の喉

庖丁始 都心は 計画運休

雪原や 星を指す 大樹の骸

野良犬の 吠える沼尻 花筏

もてなしの 豆腐ぶら下げ 風の盆

まるでシンバル 移り来し街 余寒

凍蠅よ 生産性の 我にあるや

テーブルに 君の丸みの マスクかな

行行まに 次頁の影 夕立晴

羊群の 最後はすすき 持つ少年

旱星 ラジオは余震 しらせおり

廃村の ポストに小鳥 来て夜明け