サンフランシスコ市“従軍慰安婦の像”を公共物に

アメリカ・サンフランシスコ市が従軍慰安婦の像を「市の公共物」として受け入れることが正式に決まりました。これを受けて、大阪市長は、サンフランシスコ市との姉妹都市解消の手続きを年内に完了させたいとしています。

「もっと慰安婦像を作り、真実を伝えます!サンフランシスコだけでなく世界中で!」(除幕式を主催した中国系団体代表)

今月9月、中国系市民団体がサンフランシスコ市の中華街にある私有地に建てた「慰安婦像」」サンフランシスコ市の議会は14日、市がこの像を譲り受ける決議を満場一致で可決しました。この決議に、サンフランシスコ市との姉妹都市関係にある大阪市の吉村洋文市長が猛反発。像の碑文に「数十万人が性奴隷にされた」などと刻まれたいることが「日本政府の見解と異なる」として、エドウィン・リー市長に決議を拒否しなければ姉妹都市関係を解消すると申し入れていました。

「日本バッシング、大阪バッシングである慰安婦像の設置を強行されるのは、姉妹都市の信頼関係がなくなると僕は思っています」

(吉村洋文 大阪市長

さらに、安倍総理までも、この件について「極めて遺憾」と述べ、日本政府としてリー市長に決議の拒否を求めたのです。こうした反発にもかかわらず、リー市長は22日、この決議を承認し、慰安婦像受け入れの意志を明確に示しました。これを受けて、大阪市長はコメントを出し、「大阪市とサンフランシスコ市との姉妹都市の信頼関係は消滅した」として、姉妹都市解消に向けた手続きを12月中に完了させたいとしています。

中国系の市民団体が設置した慰安婦像。

これを市が「公共物」として受け入れる背景には、何があるのでしょうか。

「中国人は嫌いなんだ!」

白人男性が中国系とみられる男性に差別的な暴言を吐いたうえ、暴力をふるい、近くにいた黒人女性が仲裁に入る様子も・・・。急増する中国人アメリカ人などに対する“軋轢(あつれき)”を示していると波紋を広げています。サンフランシスコ市では、中国系アメリカ人は人口の21.4%、実に5人に1人を占めます。サンフランシスコばかりではありません。西海岸のカリフォルニア州には中国系アメリカ人が多く暮らし、中国系移民も急速に増えています。

リー市長が2011年、中国系アメリカ人として初めてサンフランシスコ市長に選ばれるなど、中国系の市民は選挙にも大きな影響力を持ち始めていて、慰安婦像の除幕式に地元の議員も駆けつけました。アメリカの調査機関によると、2055年には中国人を中心としたアジア系移民がヒスパニック系移民の数を追い抜くと予測されていて、今後、アメリカで中国人コミュニティーがさらに大きな影響力を持つのは確実とみられます。