WBCでベスト4 常設の日本代表が残した物

野球の日本代表の常設化に伴い、2013年に就任した小久保裕紀監督の下、WBC=ワールド・ベースボール・クラシックでの2大会振りの世界一奪還を目標とした日本代表の戦いは、開催国アメリカの壁に跳ね返される形で終わりました。とは言え、決して前評判が高いとは言えなかった日本が、メジャーリーグのスター選手を揃えた相手に堂々と渡り合った事は、代表常設化による一定の成果が表れた言えます。

小久保監督の就任から凡そ3年半、特に野手陣は、横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智選手や北海道日本ハムファイターズ中田翔選手、読売ジャイアンツ坂本勇人選手等中心に多くのメンバーが代表の常連となりました。

小久保監督が日本の強みを「チームの輪」と表現した様に、首脳陣やスタッフも含めて所属チームと同じ様にコミュニケーションが取る様になり、監督が選手の特徴を充分に把握出来る効果もありました。

大会前の実践調整は2勝3敗と負け越し、不安の声も聞こえる中で、小久保監督は「選手の状態が上がるのを待つだけ」と一貫して答え、自分が選んで起用した選手を信じる姿勢を貫きました。

大会に入ると選手達がこの監督の信頼に応え、1次ラウンド初戦のキューバ戦を打線の集中力で突破すると波に乗り、チームの結束力は高まっていきました。

選手を信じる小久保監督の方針によって最も輝いたと言えるのはキャッチャーの小林誠司選手でした。

昨シーズン、読売ジャイアンツでは守備のミスが相次ぎ信頼を得たとは言えなかった小林選手を大会に入って先発で起用し続けると、ピッチャーの良さを引き出す安定したリードに加え、バッティングでも期待以上の働きを見せて、ラッキーボーイ的な存在となりました。

更に小久保監督が掲げる日本の野球も3年半の期間を通して選手達に浸透しました。1次ラウンドから攻撃面では相手の隙を突く盗塁等機動力を駆使して1点をもぎ取る形を見せました。また、日本の最大の持ち味である「ピッチャーを中心とした守りの野球」という面ではセカンド菊池涼介選手を中心に何度も好プレーでピンチを救い、ピッチャーもリリーフ陣を中心に安定していました。

大会に入って1戦ごとにチーム力が上がった日本は、2次ラウンドまで6連勝で、初めて無敗のまま準決勝に進出しました。それだけにアメリカとの準決勝であったはずの守備のミスから敗れた事は悔やまれる結果となりました。

小久保監督はここでも「これまで守備でチームを救ってきたのも彼らのプレーなので、責める事は出来ない」として敗戦の責任を一身に背負いました。そして試合後、この大会限りで退任する意向を示しました。

今後の日本代表の最大の焦点は2020年の東京オリンピックでの悲願の金メダル獲得に移り、監督人事や強化体制等オリンピックに向けた組織作りが始まります。

これまで選手の招集に関する編成面を小久保監督に任せきりにする等充分なサポート体制があったとは言えず、日本代表を支える組織の在り方に課題も残っています。

国際大会で頂点を極めるには何が必要か、球界全体での取り組みが求められます。