北朝鮮の金正男氏 マレーシアで殺害されたとの情報

韓国の複数のメディアは、北朝鮮キム・ジョンウン金正恩朝鮮労働党委員長の兄、キム・ジョンナム(金正男)氏が、13日にマレーシアの空港で、何者かに殺害されたという情報があると伝えました。

一方、韓国政府の複数の関係者はNHKの取材に「確認できない」と話していて、情報が錯綜しています。

韓国の複数のメディアは14日夜、北朝鮮金正恩朝鮮労働委員長の兄、金正男氏が、13日にマレーシアの空港で何者かに殺害されたという情報があると伝えました。

マレーシア警察の当局は、NHKの取材に「北朝鮮の男性がきのう病院に運ばれて死亡が確認された。現在死因について調べている」と述べました。

一方、韓国政府の複数の関係者は、MHKの取材に「確認できない」と話していて、情報が錯綜しています。

金正男氏は、6年前に死去した金正日総書記の長男で、金正恩朝鮮労働委員長の母親異なる兄になります。

外国語が堪能なことで知られ、以前から中国やマカオ、シンガポールなどで暮らし、北朝鮮にはほとんど戻っていなかったとみられています。

【専門家 権力構造への影響は限定的】

北朝鮮情勢に詳しい関西学院大学の平岩俊司教授は「金正男氏は一時、金正日総書記の後継者として取り沙汰されたこともあったが、弟の金正恩氏が選ばれた為、現在の北朝鮮の政権に対する影響力はほとんどなく、仮に殺害されたのが金正男氏だったとしても、北朝鮮の権力構造への影響は限定的だと考えられる」と話しました。

また、「金正男氏は中国との結び付きが強いとされてきたが、具体的な関係は明らかになっておらず、中朝関係への大きな影響は考えにくい。まずは、今回のマレーシアへの渡航目的や、金正恩政権との今の関係などを分析する必要がある」と話しました。

【これまでの活動や発言は】

金正男氏は、北朝鮮金正日総書記と、2番目の婦人であるソン・ヘリム氏との間に生まれた長男で、金正恩朝鮮労働委員長の母親が異なる兄です。

年齢は40代半ばで、1980年代にはモスクワやジュネーブのインターナショナルスクールに留学したといわれ、金正日総書記の後継者として有力な候補と、一時見られてました。

中国の北京や、マカオ、シンガポールなどで生活しながら、北京の空港などで外国メディアの記者からの問いかけに応じることもありました。

2009年には、北京の空港で記者団から父親金正日総書記の後継者問題について問われると「それは誰も断言出来ない。父だけが決められることだ」と答えていました。

2011年の金正日総書記の告別式にはその姿が確認されず、後継体制づくりで波風が立たないよう、告別式に出席しなかったという見方が出ていました。

一方で、最近は、外国メディアの応じることもなくなり、東南アジアなどで目撃情報が伝えられるだけでした。

【過去には東京ディズニーランド行きで身柄拘束も】

金正男氏は、偽造パスポートで日本に入国しようとして空港で身柄を拘束され、日本政府から国外退去処分を受けたことがあります。

金正男氏は、2001年5月、女性2人と男の子1人と一緒に、シンガポールから成田空港に到着した際、ドミニカ共和国の偽造パスポートを持っていたことから、日本の当局に身柄を拘束されました。

調べに対し、金正男氏は来日の目的について、観光の為で、東京ディズニーランドに行く予定だったなどと話しました。

金正男氏は、これ以前にも、数回に渡って日本に入国していたとみられることが、公安当局の調べで分かっていて、日本の文化などに関心を持っていたとみられています。