読み終へて 痣の醒めゆくごと 朝焼

まるでシンバル 移り来し街 余寒

秋雲に 名をつけ窓に 貼る付箋

二枚目は ベランダで読む 手紙かな

若芝に大の字 身ひとつの移住

体温だけ記す 九月の予定帳

炎天のミミズ 診察券のシミ

痙攣の 吾子の吐物に 林檎の香

夏の海を描く スプレーの秋思

謎解きの 頁に蜘蛛は 果てている

七日 名もなき家事 ジグソーパズルの一片

七日の 名もなき家事 パズルの樹氷

1月や ゴム動力の プロペラ機

血を止める ゴム巻く手際 冬あざみ

献血の ゴム巻く手際 窓に雪

冬の月 輪ゴムの中に 入れてみる

冬月を 捕う輪ゴムの 輪の中に

無影灯 下腹に 冷たい何か

手にはぜる 弁当のひも 雪催

手にはぜる 弁当のゴム 雪催い

鏡越し ロット巻く手や 春隣

ゴムとび競ふ声 冬天に満ちる

ロット巻く 手や 春近き日の鏡

冬天に満つ ゴムとびを 競う声

雑煮食う 爺はバケモノ 指鉄砲

雑煮食う バケモノ 爺さんの喉

風花へ しゅぱんしゅぱんと ゴム鉄ぽう